【スクール☆ウォーズのそれから】京都工学院が描くドラマと同じ軌跡~全国制覇へ

伏見工の流れをくむ京都工学院が、現校名になって初の花園出場を懸けた決戦を迎える。全国高校ラグビーの京都府予選決勝(11月10日、たけびし)で宿敵の京都成章と対戦する。2日にあった準決勝を取材し、大一番に向けた選手の思いを伝える。

ラグビー

〈京都予選準決勝 2日、吉祥院〉
 京都工学院 29ー0 洛北高
 京都成章 29ー3 同志社高

京都工学院メンバー(準決勝・洛北高戦)


背番選手名学年
1大下一彰3
2羽田匠之介3
3山田侑亮3
4森田一毅3
5広瀬陽太3
6田中琉翔1
7押谷吉都3
8岸田悠汰3
9村上颯斗3
10市田愛歩2
11海島泰雅3
12田原 海3
13岩本斗吾2
14石塚 行里3
15広川陽翔3
16加藤瑠絃2
17川口士央3
18春名倖志郎2
19竹田 紘3
20松見真一郎3
21片岡湊志2
22杉山祐太朗2
23木村 航3
24林 宙2
25山村一心3

現校名初の花園出場へ
11・10京都成章と決勝

京都に降る雨は試合開始時刻になると、土砂降りになった。

まるでバケツをひっくり返したような、視界が遮られるほどの豪雨だった。

準決勝の会場は吉祥院運動公園。

そう、今から約半世紀前にあった伝説の試合。

ドラマ「スクール☆ウォーズ」でも描かれた0-112で大敗し、今は亡き主将が「悔しいです!」と叫んだあの場所であった。

何かの偶然だろうか。

いや、そうではなかった。

歴史を胸に刻み、戦っている人がいる。

京都工学院が29-0で洛北高を破って決勝進出が決まると、監督の大島淳史はグラウンドを見渡しながら、こう言ったのである。

「山口先生が率いたチームが、ここで0-112で負けたのが伏見工業の原点。あの大敗から5年をかけ、京都を制して全国制覇まで導いた。今は、あの道のりと同じような気がしているんです。

工学院ができて最初の5、6年は苦労をしました。我々は来週の決勝戦で花園を決める。新たな歴史を作る。全国へ、返り咲く。

あの時、山口先生が歩んできた道と同じようなストーリーにしたいと思っています」

泣き虫先生こと山口良治が伏見工の監督に就任し、初めて迎えた公式戦が1975年春の語り継がれる大敗であった。

不良生徒を更生し、5年の歳月をかけ、平尾誠二を擁した伏見工は1980年度の全国高校ラグビーで初優勝の快挙を達成する。

伏見工の全日制が閉じられ、京都工学院として再出発したのが2018年。大島は翌2019年から指揮を任された。

就任から6シーズン目。今年は例年以上に期待が膨らむ。

現校名で初の花園へ。

その先の5度目の全国制覇へ。

「平尾2世」と呼ばれるまでに成長した司令塔がいる。

その存在を脅かそうとする選手も出てきた。

選手層は厚くなった。

それは準決勝を見ても、感じることができた。

歴史を継承しようとする選手たち。

彼らの思いを描く。

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。