中村俊介からこぼれた涙の理由 立て直して頂点に立った全日本ジュニア

昨季ジュニアグランプリ(GP)ファイナル4位の中村俊介は、全日本ジュニア選手権(17~19日、滋賀・木下カンセーアイスアリーナ)で合計212・42点をマークし、初優勝を飾った。9月のジュニアGPシリーズ第4戦日本大会ではショートプログラム(SP)2位からフリーで8位まで順位を落としてぼうぜん。それでも、目標としていた優勝を遂げ、全日本ジュニア王者として全日本選手権(12月20~24日、長野)へ向かう。

フィギュア

男子フリーで演技を披露する中村俊介

男子フリーで演技を披露する中村俊介

「言ったことが実って良かったね」

中村の目から、すっと涙がこぼれ落ちた。涙とともにこぼれたのは、浜田美栄コーチからもらった「大阪で『また頑張ろう』って言ったことが実って良かったね」という温かい言葉。数分前にかけてもらったその言葉は、自らの口から発せられることでさらに胸に染み渡り、涙腺を刺激した。

ようやく手にしたタイトル。ただし、涙を浮かべる瞳は、単なる歓喜の涙ではないことを物語っていた。得点発表の瞬間も歯を食いしばり、浜田コーチに背中をさすってもらいながら、ただ無言で肩を揺らした。そして、優勝という結果に「頑張ってきて良かった」と静かにもらした。

男子SPで演技を披露する中村俊介

男子SPで演技を披露する中村俊介

狂った歯車

さかのぼることおよそ2カ月前。中村は、大阪・関空アイスアリーナで現実を受け止められず、困惑していた。

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スポーツ

竹本穂乃加Honoka Takemoto

Osaka

大阪府泉大津市出身。2022年4月入社。
マスコミ就職を目指して大学で上京するも、卒業後、大阪に舞い戻る。同年5月からスポーツ、芸能などを取材。