高校1年生〝いくらちゃん〟櫛田育良が描く夢「自分にしかできない表現を」

〝いくらちゃん〟が、世界へ羽ばたく―。愛知・中京大中京1年の櫛田育良(16=木下アカデミー)が、1月21日まで茨城・山新スイミングアリーナで行われた全国高校選手権(インターハイ)で、銅メダルを獲得しました。ショートプログラム(SP)1位で滑り出すと、フリーでもトップで活躍する先輩たちにも負けない堂々の演技を披露。初めての晴れ舞台で、躍動しました。初出場となる3月の世界ジュニア選手権(台北)では、表彰台を狙います。次世代のシンデレラガール候補が紡ぐ物語を「Ice Story(アイストーリー)」としてお届けします。(敬称略)

フィギュア

◆櫛田育良(くしだ・いくら)2007年10月29日生まれ、愛知県名古屋市出身。5歳から競技を開始。京都・宇治中3年時の2022年に初出場したジュニアGPチェコ大会で3位、愛知・中京大中京に進学した2023年は、全日本ジュニア選手権で2位。あこがれの選手は浅田真央、本郷理華。夢は、「かぶったことがない」という名前のように、スケートで自分にしか出せない味を表現すること。身長166センチ。

初めてのインターハイ

「いくらちゃんと呼んでください!」

ぱっちりとした黒目がちの瞳を輝かせながら、16歳は屈託のない笑みを浮かべた。

櫛田育良。同じ木下アカデミー所属で全日本選手権2年連続3位の島田麻央、同4位の上薗恋奈(LYS)らとともに、将来を嘱望される新世代スケーターの1人だ。

ファンからは何と呼ばれたいか?

そんな質問を投げかけると、初めてのインターハイを終えたばかりの高校1年生は、声を弾ませて即答してくれた。

「いくらちゃんと呼んで」。インターハイで女子フリーの演技をする櫛田(撮影・勝部晃多)

「いくらちゃんと呼んで」。インターハイで女子フリーの演技をする櫛田(撮影・勝部晃多)

166センチの長い手足を生かしたエレガントなスケーティングで魅了するが、ひとたびリンクを降りると、あどけなさを残すおっとりとした受け答えが印象的。

「(親が)先に音を決めた」という名前の響きのように、無垢(むく)な表情に愛らしさがあふれる。

「初めてのインターハイは、とても楽しめました」

浅田真央や安藤美姫ら数々の名選手を輩出してきた伝統校の名を背負い、初めて立った「高校ナンバーワン」を決める大舞台。吉田陽菜、千葉百音ら今年3月の世界選手権代表メンバーに次ぐ3位入りを果たし、そう、明るい声で振り返った。

インターハイで表彰台に立つ(左から)千葉、吉田、櫛田

インターハイで表彰台に立つ(左から)千葉、吉田、櫛田

2年で15センチ伸びた

親から託された願いのように、のびのびと良く育ってきた。

競技を始めたのは5歳の頃。幼稚園の友達とスキーに行ったことがきっかけだった。母に「もう1回、スキーに行きたい」とねだると、連れて行かれたのは雪山ではなく、近所のスケートリンク。

「似てるんじゃないかって思ったんだと思います(笑い)」

初めは不本意だったものの、「滑ったら結構楽しくてはまっちゃった」。心躍らせた自宅への帰路。既に、氷の魅力に取りつかれていた。

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スポーツ

勝部晃多Kota Katsube

Shimane

島根県松江市出身。小学生時代はレスリングで県大会連覇、ミニバスで全国大会出場も、中学以降は文化系のバンドマンに。
2021年入社。スポーツ部バトル担当で、新日本プロレスやRIZINなどを取材。
ツイッターは@kotakatsube。大好きな動物や温泉についても発信中。