【宮本慎也】野村監督のもとで野球をやれた幸運 クソミソに罵倒されても…/〈27〉

ゴールデングラブ賞10度の元ヤクルト宮本慎也氏(53=日刊スポーツ評論家)が、ベテラン小島信行記者との掛け合いで展開する連載「宮本慎也 もっと野球を語ろう」。今回はヤクルト、阪神、楽天などで監督を務めた野村克也氏の思い出を語り合います。宮本氏にとっては95年のヤクルト入団時からの恩人。当時の担当記者だった小島記者との秘蔵エピソード満載のトークは後編に入ります。

プロ野球

■今回の主なトークテーマ

〈1〉20年2月に死去した野村克也さんのお墓参りに行った2人。当時の思い出話に

〈2〉緻密なデータ野球の根底に流れる精神論。理不尽な仕打ちもしょっちゅう

〈3〉ノムさんとミスターの違いから、令和の監督論に派生。厳しさ御法度の時代

◆宮本慎也(みやもと・しんや)1970年(昭45)11月5日、大阪府吹田市生まれ。PL学園では2年夏に甲子園優勝。同大―プリンスホテルを経て、94年ドラフト2位でヤクルト入団。ベストナイン1度、ゴールデングラブ賞10度。通算2162試合、2133安打、62本塁打、578打点、打率2割8分2厘。引退後は18、19年にヤクルト1軍ヘッドコーチ。04年アテネ五輪、06年WBC、08年北京五輪代表。現役時代は176センチ、82キロ。右投げ右打ち。


◆小島信行(おじま・のぶゆき)プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。

■「野村監督の本当にすごかったところは、データの活用法」

小島でも、野村監督が野球界に残したものって大きいですよね。

宮本クセとか配球とかはもちろんだけど、カウント別の特性とか、最初に実戦に役立てたのは野村監督ですもんね。

今ではコーチがみんなストップウオッチを持って、クイックのタイムを計る。それで走れるピッチャーには盗塁を仕掛けていくんだけど、それもヤクルトが最初だと思う。

三塁走者でゴロゴーより早いタイミングで走る「ギャンブルスタート」や「当てゴー」なんかも、ヤクルトが最初だった。

小島今はホークアイなどを使ってフォームのメカニックも正確に調べられます。何センチ、体の向きが違うとか、こうしたら速い球を投げられる、こうしたら打球速度が上がる、とか分かりますからね。

蓄積したデータも管理しやすくなっているし、データを重要視するのは当たり前。野村さんがいたら、もっといろいろなことを発見してたでしょうね。

宮本絶対にすごかったと思う。野村監督の本当にすごかったところは、データの活用法。試合展開なんかの状況を考え、その時の選手の心理がどうなるかを観察する。応用力なんだよ。

いろんなデータがあれば、どんどんそういう応用力が増えるし、鍛えられるんじゃないかな。でも選手は覚えることが多くて大変になる可能性もあるかなぁ。

小島例えばどんなことが大変になるんですか?

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プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。