【宮本慎也】低反発バットを否定しているわけじゃない。旧態依然とした教え方が問題だ

ゴールデングラブ賞10度の元ヤクルト宮本慎也氏(53=日刊スポーツ評論家)が、ベテラン小島信行記者との掛け合いで展開する連載「宮本慎也 もっと野球を語ろう」。高校野球編の後編は、長男の宮本恭佑投手(3年)が所属した東海大菅生(西東京)で臨時コーチを務めた宮本氏が、高校野球の指導現場で感じたことを深掘りしていきます。

プロ野球

■今回の主なトークテーマ

〈1〉金属バットが低反発となり、本塁打は減った。宮本さんは「腐っても金属」と断言

〈2〉息子がアメリカで野球をしている上原浩治氏が、ベースボールの実際を明かした

〈3〉指導者に染み付いた古い指導論が、選手の成長を妨げるネックになっていると指摘

◆宮本慎也(みやもと・しんや)1970年(昭45)11月5日、大阪府吹田市生まれ。PL学園では2年夏に甲子園優勝。同大―プリンスホテルを経て、94年ドラフト2位でヤクルト入団。ベストナイン1度、ゴールデングラブ賞10度。通算2162試合、2133安打、62本塁打、578打点、打率2割8分2厘。引退後は18、19年にヤクルト1軍ヘッドコーチ。04年アテネ五輪、06年WBC、08年北京五輪代表。現役時代は176センチ、82キロ。右投げ右打ち。


◆小島信行(おじま・のぶゆき)プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。

■「木製の利点はあると思われていたからね」

小島 実際に宮本さんが高校生を指導していて、言いたいこととかありますか?

宮本う~ん、いろいろとありすぎる(苦笑い)。真面目に話すから、限定してよ。

小島低反発バットの影響で高校野球が変わりそうですか?

宮本ホームランは絶対に減る。春の甲子園もほとんどホームランがなかった。でも低反発バットの導入は、安全性やピッチャーの負担を減らすことを考えればいいことだと思う。

その一方で心配なのが、バッターのレベル向上がどうなっていくかだよね。

小島飛ばなくなればスモールベースボールに偏って、どんどん打てなくなりそうな気がしますよね。

宮本その辺については、練習試合とかでいろいろなチームの監督さんと話した。

最初は「きちんと芯で打てば飛距離は変わらない」とか「木製は芯の部分が小さいから、ちゃんと当てようとして、バッティング技術のレベルが上がるかも」なんて声もあった。でもやっていくうちに、みんな「やっぱり飛ばなくなった」って確信したんじゃないかな(苦笑い)。

■「木製でも芯に当たれば飛距離は出るけど、とにかく芯の部分が小さい」

小島春の甲子園では木製を使っている選手がいましたが? ほとんどいなくなりましたね。

宮本木製の利点はあると思われていたからね。重さとか長さとかの規定がない。自分の扱いやすいバットを選べる。高校野球の金属バットは900グラム以上でしょ。今はプロだって900グラム以下が主流で、体重が60キロ前後の高校生がそんな重いバットは振れない。

でも、軽くして当てるだけなら木製の方が操作しやすいのでは? って考えもあった。実際にやってきて「金属より木製が飛ぶ」ってのはあり得ない。

確かに木製でも芯に当たれば飛距離は出るけど、とにかく芯の部分が小さい。逆に金属は芯でなくても、木製よりは飛ぶ。結論から言うと、腐っても金属の方が有利ってこと。

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プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。