【宮本慎也】「特に近本の4番は失敗だった」…苦戦の岡田阪神を語り尽くす/〈29〉

ゴールデングラブ賞10度の元ヤクルト宮本慎也氏(53=日刊スポーツ評論家)が、ベテラン小島信行記者との掛け合いで展開する連載「宮本慎也 もっと野球を語ろう」。歴史的な混戦となったセ・リーグの前半戦を振り返ります。後編は4位ターンと苦しんだ阪神の戦いぶりです。「四球狙い」の戦術の影響や岡田彰布監督(66)の采配も分析していきます。

プロ野球

■今回の主なトークテーマ

〈1〉前回の「巨人が優勝するには」から自然な流れで、話題は阪神の今季に

〈2〉佐藤輝と森下の打撃内容について、宮本さんが忖度まるでなしの徹底分析

〈3〉返す刀で岡田監督の采配にフォーカスし、ここまでの打ち手をチェック

◆宮本慎也(みやもと・しんや)1970年(昭45)11月5日、大阪府吹田市生まれ。PL学園では2年夏に甲子園優勝。同大―プリンスホテルを経て、94年ドラフト2位でヤクルト入団。ベストナイン1度、ゴールデングラブ賞10度。通算2162試合、2133安打、62本塁打、578打点、打率2割8分2厘。引退後は18、19年にヤクルト1軍ヘッドコーチ。04年アテネ五輪、06年WBC、08年北京五輪代表。現役時代は176センチ、82キロ。右投げ右打ち。


◆小島信行(おじま・のぶゆき)プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。

■「開幕前は自信満々の発言が多かったもんね」

小島巨人以外のチームはどうでしょう? 昨年、ぶっちぎりの優勝を決めて、大きな戦力ダウンがなかった阪神は苦しんでいる印象ですが?

宮本そうだね。戦力ダウンがないってところに「落とし穴」があったような気がする。

小島どういうことですか?

宮本簡単に言うと「油断」だと思う。基本的に同じ戦力ってことは、昨年レギュラーだった選手は今年もレギュラーだよね。だから選手間の競争が、他球団と比べて圧倒的に少ない。

どうしても緊張感が薄れるし、そういうのが油断につながったんじゃないかな。俺も経験あるけど、優勝したチームにありがちな現象だと思う。

小島そういえば、巨人の原監督は「補強っていうのは毎年やらないとダメ。FAと外国人は1人ずつ新しい選手を獲らないといけない。でないと緊張感が出ない」と言っていました。

宮本さすが巨人だね。毎年優勝しないといけないようなチームの考え方でしょうね。

阪神は優勝そのものが久しぶりで、連覇なんてしたことがない。岡田監督も去年は思うような戦い方ができて、これで勝てると思ったんでしょう。開幕前は自信満々の発言が多かったもんね。

小島なるほどですね。

宮本優勝した昨年のオフ、ノイジーとミエセスの残留が早々と決まったでしょ。この2人は代えた方がいいと思ってた。ノイジーは長打力がないし、ミエセスは当たらないし、守備も悪い。DHがないセだと、苦しいよね。ここも油断の1つだと思う。

小島飛躍が期待される森下と佐藤輝も、いまひとつ伸びてきませんね。

本文残り69% (2447文字/3535文字)

プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。