「一人の女子大学生」坂本花織を称えた言葉「人生で一番素敵なことは偶然起こる」

フィギュアスケートのGPシリーズ第5戦フィンランド大会で自身初の同一シーズンでのGP2連勝を収めた坂本花織(23=シスメックス)には、9月30日にうれしい出来事がありました。

単位不足で卒業が半年伸びたため、この日は神戸学院大の前期学位記授与式(卒業式)に出席。そこで中村恵学長によって読み上げられた式辞に心が温まりました。

日刊スポーツ・プレミアムでは中村学長へインタビューし、式辞に込めた願いや坂本とのエピソードに迫りました。その場面を回顧する坂本の声と重ね合わせ、ミラノ・コルティナダンベッツォ五輪へと進んでいく姿を描きます。

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坂本が卒業した神戸学院大学ポートアイランドキャンパス

坂本が卒業した神戸学院大学ポートアイランドキャンパス

9月30日神戸学院大卒業式、学長の式辞

坂本花織は「一人の女子大学生」のことを考えていた。

2023年9月30日。青空が広がった兵庫県神戸市内の神戸学院大有瀬キャンパス。

黒色のスーツに身を包み、前期学位記授与式に出席した。同窓と同じように、会場の椅子に腰をかけていた。

壇上に立った中村恵学長が式辞を読み始めた。

「世界史に残る新型コロナ禍も収束に向かおうとしているかに見える中、本日ここに、ご来賓の皆様のご列席の下、2023年度前期学位記授与式を挙行できますことは、本学関係者にとりましてこの上ない喜びであり、ご出席の皆様には厚く御礼を申し上げます」

式辞はそんな挨拶から始まった。コロナ禍での学生生活に触れながら「過去の歴史に負けないでください」とのメッセージが伝えられた。

坂本の頭に疑問が浮かび始めたのは、そのあとのことだった。式辞はこう続いた。

「1年半前、テレビであるドキュメンタリー番組を見ていました。一人の女子大学生の苦闘の物語でした」-。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。