ケガを抱えた島田高志郎は、なぜリンクに立ったのか 自立の末の葛藤、決断-

島田高志郎(22=木下グループ)はGPシリーズ第5戦フィンランド大会に出場し、合計218・44点で6位となりました。

第3戦フランス杯前に右足首を負傷し、中1週間半ほどで迎えた大会。万全の状態ではない中、ヘルシンキへ移動する前日には、ステファン・ランビエル・コーチによる「テスト」に臨んでいました。

ケガを負ってでも試合に出るのか。それとも健康を優先するのか。そのバランスが問われる中、島田がどのようにして出場を決め、現時点で競技人生と健康との兼ね合いをどう捉えているのかに迫りました。

フィギュア

ステファンの中にあった基準

島田高志郎は1つの「基準」をクリアし、ヘルシンキへと飛び立っていた。

出国予定日前日の11月13日。GPシリーズ第4戦中国杯から早朝着の便で帰国したばかりのステファン・ランビエル・コーチに見守られる中、拠点とするスイスでプログラムの通し練習に臨んでいた。

「その日は調子が良くて。『やったるぞ』という感じでした」

11月上旬のフランス杯前に右足首を捻挫し、その大会期間中のアクセルジャンプでも再び捻挫をしていた中、サルコー、トーループといった4回転ジャンプを確実に着氷させていった。

練習を終えると、ランビエル・コーチから背中を押された。

「フィンランドへ行ってらっしゃい!」

実はその練習は、大会出場の可否を決める「テスト」を兼ねていたのだった。

GPシリーズフィンランド大会の公式練習に臨む島田

GPシリーズフィンランド大会の公式練習に臨む島田

「僕の中には基準がある。4回転を3本跳び、そこで良い感覚が得られないと、それは準備ができた状態とは言えない」

島田自身はテストとは知らずにジャンプを跳んでいたが、ランビエル・コーチからはそう説明された。

「ステファンの中に基準があって、『ここまでできていたら行かせる』と。それが4回転を3本降りるというものでした。僕も『お、そうだったんだ』と思いました」

右足首は「捻挫がクセのようになっていた」と言う。着氷した瞬間に「ズキッ」と痛みが走ることもあった。ここ数週間はテーピングとアイシングでいたわっていた。

欠場の選択も「ちょっとはありました」と打ち明ける。

「押し切ってでも出よう」と意を決してはいたが、胸の内ではわずかな迷いもあった。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。