青木祐奈「この年齢だから…」中田璃士の涙、高木謠への助言 3人が紡ぐストーリー

フィギュアスケート女子の青木祐奈(MFアカデミー)が現役続行を決め、半年が過ぎました。

今季のグランプリ(GP)シリーズでは、第1戦スケートアメリカ(10月18~20日)、第4戦NHK杯(11月8~10日)に出場予定。昨季のNHK杯でGPデビューを飾った22歳は、初めてGP2試合に臨みます。

まずは現役を1シーズン続けることに決めましたが、後輩たちの目にはどのように映ったのでしょうか。同門で昨季のジュニアGPファイナル王者の中田璃士(16)、昨季のユース五輪銅メダルの高木謠(16)の目線を交えながら、青木の競技者としての姿を描きます。

フィギュア

中田が流した涙「唯一泣いたのが…」

2023年12月24日。クリスマス・イブの夜。

2度目の全日本選手権を総合17位で終えていた中田は、長野・ビッグハットのスタンドにいた。

独特の緊張感が漂う中、女子フリーの演技が進んでいく。7学年先輩の青木の出番は、第3グループで回ってきた。

NHK杯女子フリーで演技する青木(2023年11月25日撮影)

NHK杯女子フリーで演技する青木(2023年11月25日撮影)

フリー曲の「She」が響き始めた。自らの競技人生を重ね合わせたプログラム。4分10秒をかみしめるように、情感たっぷりに滑っていった。

「今季で引退する」と聞いていた中田は、その姿を目に焼き付けていた。

自然と涙があふれてきた。

「これが全日本での最後の演技になるかもしれないなと思っていて。滑りがきれいすぎて、涙が出てきました」

それまでも「すごいな」と心を揺さぶられる演技はあった。ただ、思わず涙したのは、初めてだった。

「スケートを見ていて、唯一泣いたのが全日本の時の祐奈ちゃんでした。ほんとに感動する演技でした。憧れです」

それから2カ月半ほどが過ぎた頃。

進退を決めかねていた青木から、現役を続けると告げられた。その場で「やったー!」と大喜びした。

「ずっと続けてほしかったので、実際に続けると聞いた時はうれしくて。その時は『あと1年』と言っていたんですけど、僕からは『もう1年』とお願いしています。『1%くらいは…』と言われたんですけど、でも去年も1%のところから始まったので」

23年全日本選手権で記念撮影をするMFアカデミーの選手たち。左から3人目が高木謠、4人目が青木祐奈、6人目が中田璃士(提供写真)

23年全日本選手権で記念撮影をするMFアカデミーの選手たち。左から3人目が高木謠、4人目が青木祐奈、6人目が中田璃士(提供写真)

青木の現役続行に伴って、一緒に氷に乗る日常も続くことになった。

ニヤッと笑いながら、ひそかに抱いている目標を打ち明けた。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。