【河辺愛菜〈下〉】五輪での演技直前にあった出来事

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。

元日から始まったシリーズ第23弾では、10月に節目の二十歳となる河辺愛菜(19=中京大)が登場しています。

3回連載の最終回は2年前の2022年北京五輪(オリンピック)で抱いた思い、以降の歩みを振り返り、将来への決意を語りました。(敬称略)

フィギュア

今も見られない演技

2022年2月。

厳格な新型コロナウイルス規制の中で行われた北京五輪は、他の大会とは違った思い出として、河辺の脳裏に刻まれている。

2年ほど前の記憶を、ゆっくりと引っ張り出した。

「会場の雰囲気は覚えていますが、演技自体は全然覚えていなくて…。しかも、演技の映像をまだ見ていないです。ショート(プログラム=SP)は見ましたが、フリーは見ていないです」

北京五輪で女子フリーの演技をする河辺

北京五輪で女子フリーの演技をする河辺

できれば、閉じ込めておきたい-。そんな思い出なのだろうか。

「たぶん今見ても、何も思わないだろうけれど、今更、見る勇気もないというか…」

後にも先にも、そういった演技はない。

「唯一見られていない演技です。他の試合は良くても悪くても、絶対に後から見ます。ただ、唯一オリンピックのフリーだけは見られていないです」

トリプルアクセルの成功を追い求め、3位に食い込んだ2021年の全日本選手権。そこで五輪代表に決まってから「オリンピアン」という肩書を背負った。

北京五輪の日本代表に選出された選手たち。左から鍵山、宇野、羽生、坂本、樋口、河辺、小松原美里、小松原尊(2021年12月26日撮影)

北京五輪の日本代表に選出された選手たち。左から鍵山、宇野、羽生、坂本、樋口、河辺、小松原美里、小松原尊(2021年12月26日撮影)

誰もが憧れる大舞台。振り返って思うことがある。

「う~ん…。演技に関しては落ち着いて、周りを無視して、もう少し自分に集中してできれば、もうちょっと良かったのではないかなと思います。演技前に『これで失敗したら…』と思ってしまった」

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大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。