【友松春奈〈下〉】国家試験、全日本選手権、がん、結婚…「今、楽しい」/社会人の今
7月からフィギュアスケートの2024~25年シーズンが幕を開けました。
2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪(オリンピック)を見据えて、多くの有力選手が大事な1年を過ごす一方、フィギュア界から羽ばたき、別の場所で人生を送っている元選手たちがいます。
日刊スポーツで2021年冬に掲載したシリーズ「銀盤に別れを告げた選手たちの今」の第2弾。
シリーズの最初は日本代表としてジュニアグランプリ(GP)シリーズなどを転戦した友松(旧姓鈴木)春奈さん(27)の「今」です。全2回の後編は管理栄養士への道、1シーズン限りの現役復帰、結婚、将来の夢を掘り下げます。
フィギュア
―専門学校の3年間で柔道整復師の国家資格を取得し、文教大の健康栄養学部管理栄養学科に進まれました
友松 専門学校の友達は柔道整復師の資格を取って、就職している中での大学進学でした。大学1年生の時に「私も勉強だけでなく、何か探さないといけない」と思って、出合ったのがアメリカンフットボールでした。知り合いの方を通じて、日体大のアメフト部の外部トレーナーをさせてもらいました。月曜日から金曜日は大学で、土日はアメフト。今までは勉強だけでしたが、スポーツの現場で学ばせてもらいました。自分のお金で交通費やテーピング代も賄っていたので、3カ月が限界だったのですが、貴重な機会でした。学生をしながら「インプットだけでなく、アウトプットもしないといけない」というのは強く思っていました。
―大学2年生でコロナ禍となりました。3年生となった2021-22年シーズンに現役復帰をされます
友松 現役復帰は管理栄養士の国家試験を受ける4年生では絶対にできないと分かっていて「今しかない!」という気持ちでした。コロナ禍が徐々に変化し「観客の皆さまにも見てもらえるかも」という思いもありました。結局、お客さんの前で演技することは1度もかないませんでしたが…。
―戻ってきて、すぐに順応できたのですか
友松 最初はジャンプも1回転からでした。三半規管も戻らず、大変でした。昔の自分の記憶はあるけれど、体が動かなかったです(笑い)。18歳でスケートをやめてからは「ヨコハマシティカップ」という大会に二十歳から出られるので、2年間待って、2回ほど出させてもらいました。その後も国体でフィギュアのトレーナーとして同行する機会があったのですが、コロナ禍で観客がいなくて、選手を思うと、寂しい思いがありました。ツイッターで面白半分で実況をしたら、たくさんの反応をもらいました。「自分もこの世界に、今なら戻れるのではないか」と思って、現役復帰をさせてもらいました。
―18歳までとは、違う景色が見えましたか
友松 楽しかったです。高校生までは常に誰かと競ってやってきたので、気持ちが精いっぱいだった選手時代を達観して見ることができました。のんびり滑ったり、自分の好きなように滑る。誰にもプレッシャーをかけられなくて、期待もされなくて「居心地がいい」とも感じました。元々表現することがすごく好きなので、自分の滑りで楽しんでもらえる人がいれば満足でした。ショートは絶対にみんなが好きと言ってくれていた曲で滑ると決めていて「ムーン・リバー」にしました。フリーは私が大好きな(米国の)アリサ・シズニー選手の音楽で踊りました。それは、この年齢だからこそ踊れるものだと思って、こだわりました。2試合しか出られませんでしたが、この現役復帰がなければ、高校生でやめた未練は吹っ切れなかったと思います。(復帰が)他の選手のセカンドキャリアの選択肢にもなれば…とも考えていました。自分の中ではやりたかったことを全部、果たせて、スッキリしました。今も、資格などが問題なければ「28歳になったらアダルトの大会にも出たいな」と思っています。
―SNSではパワーリフティングへの挑戦の模様も掲載されています
友松 結婚した旦那が同い年の日体大アメフト部でした。外部トレーナーをさせてもらっていた時の、4年生です。卒業後はスポーツジムに就職して、最初の勤務地が三重でした。アメリカのNFLの選手たちがオフシーズンにパワーリフティングをやるようで、まずは当時彼氏だった旦那が始めました。それを応援しにいきました。フィギュアではきれいさを求めていましたが、そこでは強い女性が重さを競って、ごはんもいっぱい食べている。「そういう世界もいいな。やってみよう」と思いました。
本文残り57% (2211文字/3903文字)
松本航Wataru Matsumoto
大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。
-
フィギュア
【三浦佳生の言葉】「まだショックが大きい」も前を向く「次は自分の日になるように」
【三浦佳生の言葉】「まだショックが大きい」も前を向く「次は自分の日になるように」 フィギュアスケート男子の三浦佳生(19…
松本航
-
フィギュア
【千葉百音の言葉】「自分はもっともっと上に行ける」その「上」が指し示す場所は
【千葉百音の言葉】「自分はもっともっと上に行ける」その「上」が指し示す場所は フィギュアスケート女子の千葉百音(木下アカ…
松本航
-
フィギュア
【ゆなすみの言葉】自己ベストで世界選手権資格ゲット「うれしくって」ガッツポーズ
【ゆなすみの言葉】自己ベストで世界選手権資格ゲット「うれしくって」ガッツポーズ フィギュアスケートでペアの「ゆなすみ」こ…
松本航
-
フィギュア
【うたまさの言葉】「100%になることはまだ…」GPデビュー戦でも変わらぬ姿勢
【うたまさの言葉】「100%になることはまだ…」GPデビュー戦でも変わらぬ姿勢 フィギュアスケートでアイスダンスの「うた…
松本航
-
フィギュア
【高橋大輔の言葉】プロデューサー自ら語る「滑走屋」の楽しみ方「上から俯瞰して…」
【高橋大輔の言葉】プロデューサー自ら語る「滑走屋」の楽しみ方「上から俯瞰して…」 プロフィギュアスケーターの高橋大輔さん…
松本航
-
フィギュア
【吉岡詩果〈下〉】国際大会銅メダル、度重なる故障…浮き沈み激しい15年間「宝物」
【吉岡詩果〈下〉】国際大会銅メダル、度重なる故障…浮き沈み激しい15年間「宝物」 日刊スポーツ・プレミアムでは毎週月曜に…
松本航
-
フィギュア
【吉岡詩果〈中〉】「ビリになるんじゃ…」黙々と繰り返した練習と“黄金世代”の刺激
【吉岡詩果〈中〉】「ビリになるんじゃ…」黙々と繰り返した練習と“黄金世代”の刺激 日刊スポーツ・プレミアムでは毎週月曜に…
松本航
-
フィギュア
【吉岡詩果〈上〉】今季限りで現役引退 支えてくれた友と師「やがて大きな花が咲く」
【吉岡詩果〈上〉】今季限りで現役引退 支えてくれた友と師「やがて大きな花が咲く」 日刊スポーツ・プレミアムでは毎週月曜に…
松本航
-
フィギュア
【高橋大輔の言葉】独自の発想!? 多忙な日々「朝昼晩と考えないように…」
【高橋大輔の言葉】独自の発想!? 多忙な日々「朝昼晩と考えないように…」 プロフィギュアスケーターの高橋大輔さん(38)…
松本航
-
フィギュア
宇野昌磨の目線は「見る側」に 2つの“想像”が合わさる領域/担当記者・松本航コラ…
宇野昌磨の目線は「見る側」に 2つの“想像”が合わさる領域/担当記者・松本航コラム 2022年北京冬季オリンピック(五輪…
松本航
-
フィギュア
【宇野昌磨の言葉】仲間の手に書かれた自分の名前 1人じゃない・・・受け取った銀メ…
【宇野昌磨の言葉】仲間の手に書かれた自分の名前 1人じゃない・・・受け取った銀メダル 2022年北京冬季オリンピック(五…
松本航
-
ラグビー
【大学ラグビー】対抗戦開幕!帝京の連覇を止めるのは早稲田か明治か?番記者大胆予想
【大学ラグビー】対抗戦開幕!帝京の連覇を止めるのは早稲田か明治か?番記者大胆予想 大学ラグビーが幕を開ける。関東は9月7…
益子浩一、松本航
-
フィギュア
【友松春奈〈下〉】国家試験、全日本選手権、がん、結婚…「今、楽しい」/社会人の今
【友松春奈〈下〉】国家試験、全日本選手権、がん、結婚…「今、楽しい」/社会人の今 7月からフィギュアスケートの2024~…
松本航
-
フィギュア
【友松春奈〈上〉】18歳で選んだ現役引退「自分の存在がない気がした」/社会人の今
【友松春奈〈上〉】18歳で選んだ現役引退「自分の存在がない気がした」/社会人の今 7月からフィギュアスケートの2024-…
松本航
-
フィギュア
「ようやく僕たちの北京五輪が終わった」911日後のメダル授与式/現地ルポ
「ようやく僕たちの北京五輪が終わった」911日後のメダル授与式/現地ルポ 2022年北京五輪(オリンピック)フィギュアス…
松本航
-
バレーボール
【1万字超え:バレー男子の言葉】石川祐希「僕が取れなかったのが今日の結果だと思う…
【1万字超え:バレー男子の言葉】石川祐希「僕が取れなかったのが今日の結果だと思う」 日本があと1歩で4強入りを逃した。2…
木下淳、松本航、竹本穂乃加
-
バレーボール
【バレー男子の言葉】石川祐希が、初めてドイツ戦で足がつった要因を明かした
【バレー男子の言葉】石川祐希が、初めてドイツ戦で足がつった要因を明かした バレーボール男子日本代表が、2021年東京五輪…
松本航、竹本穂乃加
-
フィギュア
坂本花織とリーチ・マイケルの共通点「長所でもあり、短所」担当記者が 見る人柄
坂本花織とリーチ・マイケルの共通点「長所でもあり、短所」担当記者が 見る人柄 フィギュアスケート女子で56年ぶりの世界選…
松本航