【宇野昌磨の言葉】「しっかり笑顔で終えられる選手になれたんだな」/引退会見全文

フィギュアスケートで日本男子初の世界選手権2連覇を成し遂げた宇野昌磨選手(26=トヨタ自動車)が14日、都内で競技者引退の記者会見を迎えました。「この度、現役フィギュアスケート選手を引退することになりました」と冒頭に報告し「今後も、プロとしてですけれどもスケートという道を続けていくことに変わりはないので、引き続き応援してくれるとうれしい」とあいさつしました。

9日に引退を発表。18年平昌オリンピック(五輪)銀メダル、続く22年の北京五輪で2つの銅メダル(団体は銀に繰り上げ発表、授与待ち)などの功績を残してきた希代のスケーターが会見で語った「言葉」をお届けします。

フィギュア

引退会見で花束を手に笑顔の宇野(撮影・鈴木みどり)

引退会見で花束を手に笑顔の宇野(撮影・鈴木みどり)

――ご報告をお願いします

宇野 このたび、私は現役フィギュアスケート選手を引退することとなりました。今日まで応援してくださった皆さん、本当に感謝していますし、また、今後プロとしてですけれども、スケートという道を続けていくことに変わりないので、引き続き応援していただけるとうれしいかなと思います。皆さん、ありがとうございました。

――引退を決めた今の心境を教えてください

宇野 まず、この場に入った時に、もちろんよくお世話になっている方もたくさんいるので、その方たちがちょっと笑顔な姿を見て僕はすごいうれしかったですし。また、この引退会見という場にこれだけたくさんの方が集まってもらったことに、今日まで自分がフィギュアスケートを競技として頑張ってきた自分の道が、本当に表れているような感じもしますし。またこれだけのたくさんの方に支えられてきたんだな、っていうのを実感してもいます。

引退会見で話す宇野(撮影・鈴木みどり)

引退会見で話す宇野(撮影・鈴木みどり)

――SNSの反響はいかがでしたか

宇野 SNSにはだいぶ疎い方なんですけど、たくさんのメッセージ本当にありがたく受け取っていますし。僕も引退という場を、あまり悲しいというよりも、すごく前向きな気持ちで、そしてまだまだこれからもスケートを続けていくという意味でも、全然、悲しい気持ちはないので。もちろん悲しいと思っていただける方は、とてもその声もうれしいかなと思うんですけれども、次に向かってまたスケートを全力で頑張ります、という気持ちも込めての発表でもありますので、今後とも楽しく応援していただけるといいかなと思ってます。

――先輩からも後輩からもメッセージが届きました

宇野 本当に皆さん、温かいなって思っています。もう僕は本当に、今回この場もですけれども、今までもメディアの皆さんにも、本当に自分の言葉で、自分の好きなようにしゃべって。そして日々の先輩後輩の方たちにも、全然気遣いとか先輩らしいことができてない時もたくさんあったと思うんですけれども、みんな本当にいい子で、そしていい先輩で。僕よりもしっかりしてる後輩もたくさんいるので、これからのフィギュアスケート界もすごく楽しみだなって思ってます。

国際スケート連盟のキム・ジェヨル会長からのメッセージを見る宇野(右)(撮影・鈴木みどり)

国際スケート連盟のキム・ジェヨル会長からのメッセージを見る宇野(右)(撮影・鈴木みどり)

――国際スケート連盟(ISU)の会長からもメッセージが届きました。世界を沸かせるニュースとなりました

宇野 そんな沸かせたなんて思ってないんですけれども。でも、それだけたくさんの方がフィギュアスケートというものに注目してくださって、そして僕を応援してくださっていたんだなと思っていますし。本当にこのフィギュアスケートでつながれた、全ての出会えた人たちにとても感謝しているとともに、これからは僕が少しでもサポートできる部分があればいいなって思っているところです。

――成績を振り返ってください

宇野 いや、まさか僕がこういう選手になれると思ってなかったですし。まさか人前で、本当にこうやってしゃべれる人間になれるとも思ってなかったので。もう本当にフィギュアスケートと出合えて、すごく感謝とともに驚きのことばかりですね。テレビで見てたオリンピックの舞台とか、まさかそこでいい成績を残せるとは思ってませんでしたし。で、また世界選手権で優勝する選手になれると、本当にこの3、4年前まで思っていなかったので。すごい、このフィギュアスケートとの出合いっていうのは、すごく感慨深いものだなと思います。

――なぜトップ選手になれたと思いますか

宇野 やっぱり僕は、本当に周りの方々に、出会う人たちに恵まれたな、ってすごく思っています。僕自身では自発的に何かやることもあまりないですし。すごくインドアですし。努力家って言っていただけるのはうれしいんですけれども、そんなことも別にないので。本当に周りの方が、僕が好きなように伸び伸びとやれるようにサポートしてくださって。もう僕の全力がしっかり出せた結果が、この素晴らしい結果につながったかなと思いますし。ついこの前まで、現役の時は課題を探して発言してましたけれども、パッと振り返って後ろを振り向いてみると、本当にすごい道のりを歩いてきたなって今は実感しております。

引退会見で話す宇野(撮影・鈴木みどり)

引退会見で話す宇野(撮影・鈴木みどり)

――(今季が始まる前のインタビューを見て)思いを振り返ってください

宇野 すごい意識高いな、って思います。今となっては。もう本当に引退してまだ間もないんですけど、もうすごい「彼はよくやったな」って僕は思います。

――「原点に立ち返りたい」とお話ししていました

宇野 そうですね。本当に1年間を通していろんなことを、試合に出て、やはりその競技者としてやると決めたからには結果を望みたいっていう思いとか、その熱い思いを感じさせてくれた後輩たち。本当に感謝していますし。でも、すごい何か楽しかったなって。これだけ全力を注げる場所っていうのが存在することに、僕はとてもすごい良かったなって思っていますし。また、最後の1年間通しても、どの試合も全力で取り組んだ末の演技だったかと思うので、もちろん、何か成功、失敗もたくさんあったかもしれませんけれども、両方等しく、僕にとっては失敗も成功も自分にとって宝物のような時間になったんじゃないかなと思います。

――競技者よりも表現者としてに意識が強くなっていったように見受けられます

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大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。