宇野昌磨の言葉〈特別編〉「後退なんじゃないですかね」松本航記者の取材から

フィギュアスケート日本男子初の世界選手権2連覇を遂げた宇野昌磨さん(26)が5月9日、現役引退を表明しました。5歳からの競技歴は21年。信頼する仲間たちに支えられ、オリンピック(五輪)では日本勢最多のメダル3個を獲得しました。

引退会見前後では日刊スポーツのフィギュア担当記者が、その人柄を掘り下げる「宇野昌磨列伝~ニッカン取材ノートから~」を連載し、多くの反響をいただきました。

日刊スポーツ・プレミアムで毎週木曜掲載の「Ice Story(アイストーリー)」。2週にわたって、2016年から担当する松本航記者(33)が印象に残った取材を厳選しています。

日刊スポーツ・プレミアムが本格始動した2022年10月以前にさかのぼり、特別版として、ありのままの「宇野昌磨の言葉」をお届けします。

フィギュア

フランス杯男子フリーで演技する宇野(2017年11月18日撮影)

フランス杯男子フリーで演技する宇野(2017年11月18日撮影)

◆2017年11月19日(フランス・グルノーブル)

グランプリ(GP)シリーズ第5戦フランス杯のフリー一夜明け取材。インフルエンザによる調整不足で大会を迎え、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)に次ぐ2位。現地で取材した記者に囲まれ、アットホームなやりとりが続いた。

―ご自身の演技は見られましたか

宇野 見ていないです。

―一夜明けて、思いはいかがですか

宇野 「苦しい試合だった」と思いますけれど、次に向けて練習に取り組んでいきたいです。

―具体的には、どういったあたりですか

宇野 何かっていうものは本当に何もないけれど、ただプログラムの数をこなして、それが体に染みついた状態で試合に臨めればと思います。

―「攻める」というテーマの中で停滞している感覚はありますか

宇野 カナダはそれなりに良かったかなと思っているので、あんまり気に懸けてはいないですけれど、たぶんそう言われるのは(4回転)サルコーを入れていないからだと思う。サルコーについては、そんなに焦っているジャンプじゃないので、まずはこの構成をしっかりできるようにして、それから余裕が出来たら、プラスアルファで入れていきたいなと思っています。

フランス杯男子SPの演技を終え汗を拭う宇野(2017年11月17日撮影)

フランス杯男子SPの演技を終え汗を拭う宇野(2017年11月17日撮影)

―SP、フリーでの課題はいかがですか

宇野 ジャンプでいうとフリップかなって思っています。ショートに関しても、フリーに関しても、フリップが一番練習でも悪いので、一番ネックとなっていると思います。

―演技自体で見せたいものに関して、自己評価はいかがですか

宇野 いつもだったらそういうところを考えるんですけれど、今はそこまで考えるほど余裕がなかったので、今はあまりいい答えが期待できないと思います。

―GPファイナル、全日本選手権と、どうステップアップしたいですか

宇野 先ほどと同じ答えになりますが、ファイナルに向けての期間、ただただ練習をする。何かって言われたら何か分からないですけれど、ただ氷に数多く乗って練習したいと思っているので、練習する。それで試合に臨むのが目標です。

松本航記者の取材ノート

松本航記者の取材ノート

―5コンポーネンツが9点台。去年より0・5ポイント程度伸びています

宇野 要因は分からないですけれど、今年演技をしている中で、まだ自分の満足いく表現ができた試合が1つもない。それでも最低基準が引き上がっているのはいいことだと思います。でも、自分が満足いく表現も、ジャンプもしたいので、後半に向けてより仕上げていきたいです。

―特にスケーティングスキルを評価されています

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大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。